コンテンツマーケティングは「ミシュランガイド」に学べ!
ドライブをする人のガイドブックを作ったミシュランタイヤ。同社の作ったミシュランガイドは企業ブランドと認知に大きく寄与しており、それはつまり商品やサービスの周辺にこそコンテンツの種がある。
昨年末、東京のラーメン屋「Japanise Soba Noodles 蔦」が掲載されて大きな話題になったミシュランガイド。フレンチレストランやイタリアン、中華料理店が掲載されることが多い中、ラーメンを中心に扱う店が選ばれたということで注目を集め、連日大行列ができています。また、「ミシュランガイドに掲載」という情報は、多くの店が客の目に触れる場所に飾ってあり、いかに「ミシュラン」というブランドがグルメの世界で大きな影響を及ぼしているか、そして、パブリックな権威であるかが実感できるかと思います。
皆さんがご存知の通り、このミシュランガイドを発行しているのは、タイヤメーカーの「ミシュラン」。
もともと、ミシュランがグルメガイドブックを作るに至った狙いは、このガイドブックにより自動車旅行が活発化し、タイヤの売れ行きが向上することでした。
ミシュランに掲載された料理店は、「本当においしいお店」として確固たるお墨付きを得ている訳ですから、全国あるいは全世界の人がその味を求めてきます。その際、車を利用する人がミシュランのタイヤを使用することを狙ったわけです。
前述の通り、ミシュランガイドに掲載されるお店は、その味やホスピタリティを世界的に評価されていることになるため、毎年発表が行われる度にテレビやネットで話題になります。
まさにこのミシュランガイドは「グルメガイドブックを出版する」という手法でいち早くコンテンツマーケティングを実践した好例と言えます。
「ミシュラン」という名前を耳にする機会を多く作ることで、ミシュランはいち「タイヤメーカー」としてではなく、「ミシュラン」として企業の名前を広く認知させることに成功しています。そしてミシュランのパブリックなイメージを流布させ、名前だけではないブランドの信頼、定番、王道感といった価値を付与させています。タイヤは破損すれば事故に直結する商材。この「信頼できるブランド」は競合メーカーに対して非常に大きな武器になっているはずです。
この成功の鍵は、ブランド認知の手法を主要商材であるはずの「タイヤ」から発想せずに「人々がもっとタイヤを使うようになる方法」という、ユーザー目線の切り口から開発したところです。またそこが、近年多くの企業が取り入れているコンテンツマーケティングの、最もコアな部分でもあります。
商品やサービスのプロモーションのネタは、このように企業が提供している商品やサービスの周りにあることが多いのです。しかし、この類いのネタは単に「商品を安価でリーチの高いメディアから告知すれば効率的」という発想からは掘り起こされません。なぜなら「商品を」が主語になっている時点で、ユーザーが求めている価値から最も遠いところから考え始めているからです。
例えば、「清涼飲料水と長距離マラソン」「温かいお茶とこたつ」など、消費者の生活を一歩引いた視点から考えてみることで、「タイヤとグルメ旅行」のように、人々が自然に参加したくなるヒットの組み合わせが見えてきます。
「この商品を使用するときは、どのようなシーンが多いだろうか」「どんな気分で、このサービスを利用するのだろうか」など、商品自体ではなく商品の周辺にこそ、その魅力を伝えるためのコンテンツの種があるのです。