
若年層に届かない理由はどこにあるのか オートレースSNSの構造的課題と打ち手
オートレース業界におけるファン層の高齢化は、長年指摘されてきた構造的な課題です。競馬やボートレースがタレント起用やCM、デジタル施策を通じて若年層・ライト層との接点を広げてきた一方で、オートレースは「専門性が高い」「近寄りがたい」という印象をいまだ払拭しきれていません。
しかし、デジタルネイティブであるZ世代やミレニアル世代にとって、未知の文化や未体験の世界観は、必ずしも敬遠されるものではなく、「新しい発見」として受け取られる可能性も秘めています。
本記事では、オートレースのSNSが若年層に届かない理由を感覚論ではなく構造として整理し、そのズレを是正するための具体的なSNS戦略の方向性を解説します。
情報の非対称性が生む「入口不在」の問題
結論から言えば、若年層に届かない最大の要因は、発信内容が既存ファンを前提としたハイコンテクスト情報に偏っている点にあります。出走表、成績、専門用語を多用した投稿は、経験者にとっては有益でも、未経験層にとっては意味を理解する以前に離脱を招くノイズとなります。
現在のSNS、とりわけAIによるレコメンドが主導する環境では、「理解できる」「直感的に面白い」コンテンツほど拡散されやすい構造にあります。つまり、入口段階で賭けや予想を想起させる文脈は、アルゴリズム的にも不利に働きやすいのです。
海外のモータースポーツでは、レース結果よりもマシンの造形美、整備の緊張感、選手の表情といった感情的・感覚的要素を切り取る発信が主流になっています。オートレースにおいても、選手自らがエンジンを整備するという独自性を活かし、工具を扱う手元、金属音、エンジン音などを強調することで、「ギャンブル以前の魅力」を伝える入口を設計することが可能です。
プラットフォーム文脈を無視した映像転用の限界
多くの公営競技アカウントが陥りがちな失敗として、テレビ中継や横長映像をそのままショート動画に転用してしまう点が挙げられます。これはプラットフォームごとの文脈を無視した設計であり、若年層にとっては「自分向けではない」と瞬時に判断される原因になります。
TikTokやInstagramリールでは、冒頭1秒の没入感と縦型ならではの近接性が重視されます。遠景のレース映像や実況中心の構成ではなく、コースサイドの至近距離映像や、風圧やスピード感が伝わる画角、スローモーションによるコーナリングの美しさなど、スマホ視聴に最適化された専用クリエイティブが不可欠です。
実際、公式感の強い映像よりも、観客目線やUGC風の臨場感ある映像の方が高い再生数を獲得する傾向があります。これは偶然ではなく、AIが映像内の動きや構図を解析し、「没入しやすいコンテンツ」を評価している結果でもあります。
昭和性を隠さず「レトロフューチャー」へ変換する
オートレース場が持つ昭和的な空気感やインダストリアルな質感は、これまでネガティブに捉えられがちでした。しかし近年、Z世代を中心に昭和レトロやY2K、サイバーパンク的世界観が再評価されており、無機質でハードな空間は「エモい」「非日常的」として受け入れられる土壌があります。
無理にポップで明るいイメージへ寄せるのではなく、ナイター照明に照らされた走路、金属的な整備場、油と鉄の質感を高コントラストで表現することで、ファッションやアート文脈との接続が可能になります。これは単なるSNS映えではなく、オートレースを「体験型カルチャー」として再定義する試みです。
施設の古さを隠すのではなく、歴史や世界観として再解釈することで、ギャンブル場ではなく「夜のエンターテインメント空間」としての認識を形成し、来場動機へとつなげることができます。
まとめ
オートレースが若年層に届かない理由は、関心の欠如ではなく、入口設計と文脈のズレにあります。
賭けを前提としない感覚的な導入、縦型動画に最適化された臨場感、そして昭和性を資産として再構築する世界観設計。これらを組み合わせることで、SNSは単なる告知媒体から、新たなファン層との関係構築のハブへと進化します。
まずは「賭けなくても面白い」「知らなくても惹かれる」という入口を徹底的に磨くこと。それこそが、将来的なファン定着と業界の持続性につながる現実的な一歩です。


























































