悪用されたプーマのTwitterキャンペーン
企業がTwitterを使ったマーケティングを行って炎上する事例はたまに見受けられますが、多くは運用側の失言やその対応についてであることが大半です。
しかし、マーケティングの仕組みに不備があると、それを悪用されて炎上してしまうことも時にはあります。
今回はTwitterのキャンペーンで不備を突かれてしまった事例をご紹介したいと思います。
スポーツファッション・ブランドのPUMA(プーマ)はTwitterのハッシュタグを使って、プーマと契約しているプロスポーツ選手の手書きメッセージが入ったブロマイド写真を受け取れるというキャンペーンを実施しました。
参加方法は簡単で、「@puma」のアカウントに「#Fastergraph」というハッシュタグを付けてツイートするだけです。すると、ツイートした人に宛てたメッセージ入りの写真がTwitterで送られてきます。たとえば名前が「ジョン」なら、「ジョンへ、(活躍できたのは)君のおかげだよ」というメッセージが入ったスポーツ選手の写真が届くのです。
一見、とても心温まるサービスのように見えますが、何が問題となったのでしょうか?
選手から送られてくるメッセージの宛名には、受け取る側のTwitterのユーザー名が自動的に入る仕様になっていたため、これを悪用して選手が不謹慎な発言をしているかのようなメッセージを作成するネットユーザーが続出したのです。
例えば有名なサッカー選手がゴールを決めてガッツポーズする写真では、宛名に禁止薬物の名称が入ったメッセージが作られました。
先ほどの「ジョンへ、君のおかげだよ」というメッセージの、名前の部分が薬物の名称にされたのです。
「<薬物名称>へ、きみのおかげだよ」といった具合です。
どうでしょうか。まるでその薬物を使用したおかげで活躍できたとでも言いたげなメッセージですね。
このような選手のイメージを非常に損ねる悪質なツイートが世界中に配信されてしまったのです。
・参考写真
この事態についてイギリスのタブロイド紙「Daily Mail」は、「プーマが、Twitterユーザーたちに有名サッカー選手へのツイートを呼びかけ、大失態を招いた」と報じています。
何故このような事が起きてしまったのでしょうか。
ごく簡単に言うと、システムの長所を逆手に取られてしまったということです。「ハッシュタグを付けてツイートするだけ」という本来はユーザーの手間を簡略化するために考えられたシステムが、Twittterのユーザー名を一時的に悪意のある名称に変更するだけで、予期せぬツイートがばら撒かれてしまったのです。
ユーザーと運用側の手間を両方軽減できるのでキャンペーンの自動化はとても合理的な判断です。しかし、その仕組みを悪用しようとするとどのような使い方ができるのか、それをどうやって監視するのか、悪用された場合にどのような対策を実施するのか、といったような事を事前に検討しておく必要がある、そんな示唆を与えてくれる事例ではないでしょうか。