総務省の統計調査から見るコンテンツマーケティングの展望
平成27年5月19日に、総務省の情報通信政策研究所から「平成26年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」が公表されました。
その中で昨年から今年にかけてインバウンドマーケティング関連で盛り上がりを見せている「コンテンツマーケティング、ソーシャルマーケティング、スマホ向けコンテンツ」の潮流に肯定的な数字が表れていましたので、今回はその調査結果から日本国内コンテンツマーケティングの展望を考察して行きたいと思います。
<20代のスマホ利用率が94%超える >
スマホ利用率はここ3年間で急成長を見せ、20代のスマホ利用率が94%超えるまでになりました。30代以降も同じように急成長し80%を超えています。
スマホ利用率は各社からガラケー(フィーチャーフォン)の販売停止が発表される中、今年も引き続き上がる見通しです。 40代以下でスマホによるインターネット利用時間がパソコンを超えており、若年層ほど差が開いています。
インターネットの利用は「スマホで」行うのが各年代で共通になるため、スマホ向けコンテンツの必然性が高まっている事が伺えます。
<若い年代でのソーシャルメディアへの転換 >
10代ではソーシャルメディアの利用が59.6%なのに対し、メール利用率が14.3%と大きく差が開いています。
20代ではメール利用率が29.1%で、ソーシャルメディア利用率との差が10代よりは少ないですが、傾向としてはソーシャルメディアとの差が開きつつあります。
ソーシャルメディア、メッセンジャーアプリがコミュニケーションの手段としてメールの代替えとして機能しており、ソーシャルメディアを使った広告運用またはマーケティング が今年も大きく取り扱われる事が想定されます。
<テキスト系サイトの閲覧時間>
新聞閲読、書籍・雑誌・コミックが下げ止まり横ばいになっている状況に対し、テキスト系サイトの平均利用時間が伸びています。
※テキスト系サイトとは、ソーシャルメディア/ブログ・ウェブサイト、ダウンロード済みの書籍・雑誌・コミックの閲覧を指します。
行為者数と平均時間の両方でテキスト系サイトが新聞を上回っており、テキストコンテンツの需要と配信がますます重要になりつつある事が読み取れます。
<メディアの重要度>
メディアの重要度(情報源としての重要度)に関してはテレビが圧倒的に強く、次点で30代まではインターネット、40代からは新聞と続きます。情報の重要度においてウェブコンテンツはテレビの水準に達していないようです。
<メディアの信用度>
メディアの信用度に関しては全ての年代でテレビ/新聞がインターネットの倍近い数字を付けています。そのためウェブは情報源として重要ではあるが、情報の信憑性や信用性はそれほど高いとは見られていないようです。
<テーマ別のメディアの信用度>
テーマ別の各メディアの信頼度としてテレビ/新聞の様に情報配信に一定の責任をもって審査されている情報機関が信頼を得ています。よってテレビ局/新聞社が運営しているウェブサイトの信用度は高いですが、反面ソーシャルメディアやブログ、動画サイトの情報は信頼度が低い状態となっています。
ウェブコンテンツの質はGoogle/Yahooの検索結果を見ても分かる通り、サイトによって大きくばらつきがあります。検索エンジンを提供しているGoogleがウェブスパムや低品質コンテンツを排除するアップデートを繰り返している現状から見ても、インターネット上の情報の信頼度にはまだ改善の余地が大きくあると言えるでしょう。
特にアフィリエイト目的の真偽不明な情報サイト、数的根拠のないランキング比較サイト、運営によるやらせ自作自演が定期的に問題となる口コミサイトなどの問題が大きくニュースになっていますので、インターネット上の情報について全体的に懐疑的な考えを持たれやすい事が分かります。
■ウェブサイト運営者が現時点で抱える課題
若年層でのスマホ利用が大きなシェアをもつ状況の中で、テキストコンテンツの利用が増えつつあります。そのためウェブサイト運営者は「スマホ向けコンテンツ制作能力」「その安定した供給」「ソーシャルメディアへの配信経路の確立」の3つが現時点で重要な課題になります。
ウェブ上のコンテンツはテレビ・新聞など既存メディアに比べると信用度に大きな差があります。さらにウェブサイト運営者にはこの差をカバーするためにコンテンツの信用度が求められます。 さらにGoogle、Yahooと言った広告媒体のクリック単価/PV単価の上昇が後押しする中でウェブサイト運営する各社、独自の編集体制を強化しつつあります。
こうした状況下で、優秀な編集者とライターの獲得または育成が追いつかず高品質なコンテンツを提供できない問題が顕在化しつつあります。これから数年間は需要が増え続ける見通しのため、コンテンツマーケティングによってブランディング強化を行うには社内編集体制の強化またはコンテンツマーケティング支援業者の協力を得てコンテンツ供給体制の強化が求められていくことでしょう。
■将来コンテンツマーケティングが抱えるリスク
今後有り得るだろう大きなリスクとしては以下2点が考えられます。
・需要のピークを遠くない将来(10年以内)に迎える可能性。
・無料コンテンツの供給量過多により無料コンテンツを届けるのにも一定以上の投資が必要とされるため、ウェブサイト運営を続ける体力がない企業がコンテンツを作れても利用者に届けられないと言う状況が発生する点(=コンテンツショック)。
そのためウェブサイト運営者には、「編集体制の構築」「コンテンツの供給体制「配信経路の確立」以外にもCRMの導入やDMPを使ったマーケティングなど、ユーザーとのエンゲージメントを高めてユーザーの離脱を防ぐマーケティング活動が求められます。
■コンテンツマーケティングの今後について
今回の調査を見る限りでは明るい数字が並んでおり、需要の後押しがあってコンテンツマーケティングの市場規模は順調に伸びていく事が予想されます。
ただし無料コンテンツの供給量が増え、マーケティングオートメーションによって販促活動が自動化かつ高度化されて行く流れの中で、前述したリスクが発生する点に注意しておく必要があるのではないかと考えられます。
以上、コンテンツマーケティングの施策を考えるうえで参考になれば幸いです。
出典:「平成26年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(情報通信政策研究所)
※上記出典を加工して作成