競合企業に関する記事を書かないのは何故か?
自社製品をアピールする際に、競合製品と比べた時の優位性を示すのは有効な手段です。複数の選択肢の中で迷っている見込み顧客に対して効果的に説得しやすくなるためです。
逆に、自社で作成したコンテンツに競合商品の情報を掲載しようとすると、懸念されることがいくつかあります。
まず、自社の媒体が競合製品の宣伝につながってしまう点が挙げられます。
コストをかけて作成した記事が他社の認知度を向上させること繋がってしまっては、広告費をかける意味が半減してしまいます。
また、比較広告の体裁をとる場合、その表現には細心の注意を払う必要があります。比較広告は景品表示法により規制されており、競合他社よりも自社製品が著しく優れていると誤解されるような表現は、不当表示として制限されてしまいます。
そのため、比較広告では客観的な数値や事実を用いて、公正に比較することが求められます。
このように自社の記事に競合他社の情報を掲載するのは慎重に扱うべきテーマであると言えるでしょう。
しかし、コンテンツマーケティングの研究者の中には、先に挙げたリスクを冒してでも競合の情報を掲載することに意味がある、と主張する意見もあります。
SEOコンサルタントのTom Demers氏は、自社の記事で他社について言及するべき5つの理由を挙げています。
では、具体的にどのような点をメリットとし捉えているのか見て行きましょう。
(1) ビジネスはゼロ・サムゲームではない。
多くの業界にとってビジネスは大きさの決まったパイの奪い合いではないという指摘です。確かにある会社が成長することでより多くの顧客がその業界に注目し、業界全体が売り上げを伸ばしていくという事は充分に起こり得ます。自社が配信した記事によって他社の認知度を向上させたとしても、業界全体の認知度が上がることで結果的に自社のビジネスにも貢献するという考えには一定の理解が得られそうです。
(2) 競合と思っている会社とは実は競合していない。
自社製品に多くの機能が搭載されている場合は関連する企業を数多く挙げることができるかもしれませんが、顧客が購買の意思決定を行う際、同様の価格帯・同様のサービス等を検討する真の競合は2つか3つしかないのだという指摘です。確かにサービスの種類もりますが、購入を検討する時に何十社も競合サービスを比較検討する人は少ないかもしれません。
(3) 顧客は競合を既に知っている。
現在は顧客が市場動向を知る手段が多数あります。例えば日本であれば価格.comを使えば、どのような製品がどのくらいの価格で提供されているか、細かい情報を手に入れることができます。その他のB2B向けの製品やサービスであっても、Googleで検索すれば多くの情報が得られますし、業界に特化したサービス比較サイトも存在します。従って、顧客は既に競合を知っている事が多いので、敢えて競合の情報を隠すことに意味はないというのも頷けます。
(4) 他社との良好な関係が役立つときがある。
変化の速い現代社会では、自社も競合もサービスや業態を変化させる可能性があります。サービスの改善を積み重ねていった結果、世間的には別ジャンルのサービスとしてカテゴライズされてしまうといった事は容易に起こりますし、今まで競合と考えていた企業が提携すべきパートナーに変化することもあり得ます。そのため競合と認識している企業と敵対するよりも、有効な関係を築くほうが長期的に自社の利益に繋がることもあるでしょう。
(5) 正直な記事は信頼性が増す。
公正な視点で競合を取り上げることで自社コンテンツの信頼性が増すという指摘です。自社がアピールしたい要素だけを盛り込んだ記事よりも、読者にとって最適な情報であれば競合の情報も明記する、そうした客観的な視点で構成された記事のほうが専門性の高い顧客には評価されます。特にサービスの購入や導入の検討段階に近い見込客ほど、客観的な視点で書かれたコンテンツに信憑性を感じやすいのではないでしょうか。
自社で取り扱っている商品やサービスによっては競合自体がほとんど存在しなかったり、競合情報を一切載せられない事情があるかもしれません。
しかし今まで競合情報というだけで掲載の対象から除外していた場合、読者にとって有用な情報を持つ競合企業が存在するのであれば、どこまでならその情報を掲載できるのかについて検討してみる余地はあるのではないでしょうか。
参考資料:searchenginejournal.com