日本はマーケティング後進国? 知っておくべき3つの弱点
広告マーケティングを生業としている方の多くが「カンヌ国際広告祭」の存在をご存知であるかと思いますが、では「DMA国際エコー賞」をご存知でしょうか?耳慣れない賞かもしれませんが、実は世界最大にして最古の、世界で最も権威あるマーケティングアワードであり、さらには「世界最難関」の広告賞とも呼ばれています。
毎年、世界各国からマーケティングの第一線で活動するプロフェッショナル200名超が集い、厳選な審査が行われるのですが、その審査基準は「世界最難関」にふさわしいものとなっています。
1.優れたマーケティング戦略
マーケティングコミュニケーションの目的が明確であり、それを実現するための戦略が実際にどのように機能し、課題を解決したかが明快であるかどうか。
2.群を抜いたクリエイティブ
新しい時代に即した革新性、斬新さ、そして外面のデザインだけでなく、コピーなどのメッセージがどのようにターゲットオーディエンスに影響を与え、行動を促したか。多様なメディアを複合的に用い、相乗効果によって新しい効果を生んでいるかどうか。
3.卓越した成果
KPI(重要業績評価指標)やROI(投資資本利益率)を基本とし、その他レスポンス率や販売実数、シェア変動率、その成果の汎用性や拡張性などが第三者にも容易に理解できる明確な数値や比較可能なデータが明示されているかどうか。
この3つの審査基準を同時に満たすマーケティングキャンペーンが、どれだけこの世に存在するでしょうか。この指標そのものが、DMA国際エコー賞の権威を確固たるものにし続けている証なのです。
さて、それに対して日本での知名度が高い「カンヌ国際広告祭」は、クリエイティビティのみを競うマーケティングアワードとなっています。出品作品の多くが、マーケティングの成功事例として国内で広まったものではなく、カンヌの「賞取り」用に作りこまれた理想的なストーリーとクリエイティブを兼ね備えています。
この賞については、日本からも多くの受賞者を排出し、広告に携わるクリエイターの憧れの的となっているのですが、実はカンヌ金賞の作品ですら「DMA国際エコー賞」では最終審査にすら進めないことがあるのです。
そして、このことが日本のマーケティングのレベルを象徴しています。確かに、日本のクリエイティブのレベルは非常に高くなっているのですが「クリエイティブ偏重型」であると言わざるを得ません。広告やプロモーションは、あくまでも商品・サービスのマーケティングの一部であることを認識できていないのです。
そういった現状は、部分最適にこだわり全体把握が苦手な日本人の特徴をよく表しています。多くの企業に共通しているのが、マーケティング戦略・広告戦略・店頭販促といった、それぞれのセクションが別々のベクトルで動いており、本来ならばひとつのストーリーの中で進まなければいけないプロジェクトが分断されているのです。
従って日本の企業では「IMC(統合マーケティング)」が非常にやりづらい環境にあると考えられます。日本から「DMA国際エコー賞」へのエントリーが極端に少ない理由は、高水準なマーケティング施策を、トータルに設計・実施・評価できる企業、そしてそれを設計してクリエイティブからマーケティング目標達成まで責任を持つことができるエージェントが少ないからであることに他なりません。
これからマーケティングに携わる人は、デジタルや最先端のクリエイティブなど日本の得意分野を活かしながら、本質的なマーケティング課題を解決し、結果に目を向けられるような俯瞰視点を持ち、部分最適ではなくプロジェクト全体をリードするようなリーダーシップが求められることになるでしょう。