コンテンツは「広告の目線」からは作れない
スマホからインターネットに繋がりっぱなしの生活や、SNSによって日常的に交わされる膨大な情報交換といった、コンテンツが有り余っている現代社会において、商品やサービスの一方的な告知や宣伝は、時としてユーザーの求める情報にならないことがあります。
例えば、「部屋をオシャレに変えたい」と考えているユーザーがいたとします。そのユーザーは「洗練されたインテリアを購入したい」と思っているかもしれないし、あるいは「間取りをがらりと変えてセンスのいい空間を作りたい」と思っているかもしれません。そのようなユーザーに対して、壁紙のメーカーが「壁紙の色を変えること」をダイレクトに訴えたところで、壁紙の購買意欲は刺激されません。
しかし、「オシャレな部屋作り」をするための選択肢を並列して複数提案した場合、ユーザーは比較検討した結果、「壁紙を変えて部屋をオシャレにする」という決断をすることがあります。
その場合、例えば「オシャレな部屋作りのためのキュレーションサイトを用意する」ということが、ユーザーにとって優良なコンテンツになるかもしれません。そこにはハイセンスなインテリアを紹介する記事があったり、リフォームの方法が掲載されていたり、部屋作りに関連する情報を集めることで、ユーザーの中に眠っている購買欲求をくすぐることができ、結果として満足度の高いコンテンツを提供することが出来ます。そして、その中に壁紙に関する魅力的な情報があったときに、ユーザーは壁紙の購入に前向きになったり、そもそもこのサイトを用意した壁紙メーカーへのエンゲージメントが高まっていきます。
ユーザーは常に「自分にとって」価値のある情報を求めています。
つまり、前述した例の場合、ユーザーにとって「部屋をオシャレに変える選択肢」こそ価値のある情報です。自分の求めている欲求に基づいた情報が集められて初めて、本当に価値のあるコンテンツとなるのです。
これはまさにコンテンツマーケティングの考え方そのものですが、実は商品やサービスを「告知」するだけの広告的な発想からは、このようなユーザーとの関わり方ができるコンテンツは生まれにくいのです。多くの宣伝担当者は「そんなことは分かっている、ユーザーに合わせた方法やメディアで告知をすればいい」と思っているのですが、なかなか思い通りの成果が出ない場合には、ユーザーにとって価値のある情報を用意することよりも、告知したい商品・サービス情報をどうすればユーザーにうまく伝えられるか?という工夫を優先していることが多々あります。
この目線で企画を考える人が前述の壁紙メーカーの宣伝担当をやってしまうと、「壁紙の種類が豊富なこと」や「壁紙の強度や付け替えの簡便性」といった、自慢の商品スペックを楽しみながら理解してもらうためにマンガや動画を作ってみようとか、実際に触って体感してもらうイベントを開催して、商品の良さを視覚的に理解できる装置を作ってみよう、などといったアプローチに辿りつきます。企業の視点だと一見正しいことをしているように見えますが、「部屋をオシャレに変えたい」ユーザーにとっては全く価値を見出せない情報の入口になっています。
逆に「部屋をオシャレに変えたい」ユーザーに、最初にどんな情報を提供したら興味を持ってくれるのだろう?というユーザーの目線からアプローチを考えれば、自然に価値のある情報が生まれてくるのです。