HubSpot、PayPal、Twitterに学ぶグロースハック
グロースハックが流行のキーワードとして様々なメディアに取り上げられるようになってきました。
グロースハックの定義についての議論は尽きませんが、その言葉が主に意味する「多額の広告予算を使わずに知恵をしぼってWebサービスの成長を実現する」といった取り組みがウェブマーケティング担当者に求められていることがその背景にあります。
グロースハックはHubSpot、PayPal、Twitterといった企業の成功事例も出ており、実務におけるベストプラクティスも蓄積されつつありますので、今回はそうした企業の事例を交えながらご紹介したいと思います。
現代のインターネットビジネスでは、スマートフォンなどモバイル端末での体験が重要であることは明らかです。それにも関わらず、Webサイトとモバイルでまったく同じ体験を提供しているウェブサイトは少なくありません。同じ人間がWebから訪問することもあれば、モバイルから訪問することがあることを考えると、デバイスごとに適した体験を提供するのが鉄則です。
特にモバイルでは凝った操作は好まれず、ユーザーが見たいと思ったときに必要な情報を提供できるようにする必要があります。Twitterの製品開発担当者は「モバイルユーザーが手の込んだものを欲しがることはめったにない」と語っているとおり、極力シンプルなサイト構成が優れたモバイル体験につながると考えられています。
また、PayPalでは文字入力で英数字や記号の切り替えが要求されるEメールとパスワードのログインから、数字のみで構成される電話番号と四桁の暗証番号に変えただけで、モバイルユーザーの利用率が跳ね上がったというグロースハックの事例が報告されています。
「継続利用してもらえなければ、他の施策は何も意味をなさない」インバウンドマーケティングツールとして有名なHubSpotのグロース担当者はこう語っています。継続利用されれば顧客一人当たりの売り上げが向上し、顧客一人当たりの獲得コストが下がります。共有や拡散をしてくれたり、より高額の有料プランに変更したりする可能性もあるでしょう。ユーザー登録した訪問者がすぐに離れてしまっては何も始まりません。HubSpotではユーザー登録後から最初の一週間での行動を徹底的に分析し、Webサービスの価値やビジョンが正しく伝わるよう改善に努めているそうです。
グロースハックで忘れてはいけないのは、製品が最も重要なマーケティングツールだという考え方です。
製品開発と販売が別の仕事であると分けて考えられがちですが、優れた製品があれば販売も楽になります。トライアル期間を設けたり一部の機能だけを無料利用できるフリーミアムモデルを採用したりすることで、顧客はお金を支払う前に製品をよく知ることができるようになりました。
アンケートフォーム作成サービスで有名な「SurveyMonkey」の会長は「アップグレードする前に製品を使わせるほど、アップグレードの成約率は上がっていく」と語っていますが、まさにそうした考えを示唆していると言えるでしょう。
著者:Takayuki Sato