コンテンツの重要性が増すアパレル業界
アパレル業界では機能性そのものよりもデザイン等の感性価値に重きを置く傾向があります。そのため、ユーザーの感性や共感に訴えかけるコンテンツマーケティングとは、切っても切り離せない業種と言えます。
インターネットが登場するより以前は、アパレルブランドや大手の流通は、ファッション誌と手を組んでコンテンツマーケティングを行ってきました。しかし、近年はWEBを通して多様な表現ができる環境が整っているため、アパレル事業でのマーケティングを考える上で欠かせない要素となっています。
コンテンツを用いた視覚的なメディアとして地位を確率しているのが「Pinterest」です。
楽天が5,000万ドルを出資したことでも話題になりましたが、同サービスに参加したユーザーがネット上で見つけた写真を登録し、ビューティーやファッション、ユーモア等のカテゴリ別にフィードに流れる写真を見て楽しむサービスです。ECサイトに掲載された商品画像を添付することができるため、それを見たユーザーはリンク先で実際に商品を購入することもできます。
ユーザー数は全世界で5,000万人にも及び、次から次へと流れてくる美しい写真群は、モード系ファッション誌のWeb版といった様相を呈しています。注目したいのは「Pinterest」のユーザーの8割が女性であり、購買意欲が高く、リンク先のECでの購入率が極めて高いということです。実際の年間収益は今のところ明かされていませんが、ユーザー数の増加とともに売上規模も増えていると考えられます。
同じように、日本でも同様のモデルでアパレルのEコマースへ送客するサービスがあります。
ファッションコラージュのSNSアプリである「iQON」です。月間ユニーク数が100万を超える「iQON」は、ECコマースが提供するAPIを活用して、提携先の ECコマースに登録されたファッションアイテムの写真を切り貼りしてコーディネートすることができます。
ユーザーは自分でコーディネートした画像をアプリに登録し、他のユーザーからのリアクションを見て楽しむというのが基本的な仕組みですが、「Pinterest」と同様に、気に入ったファッションアイテムの写真からそのままECサイトに移動して購入することができるようになっています。この「iQON」経由での売上げが1億円を超えるECサイトも登場しており、10代後半から20代前半の女性にかなりの影響力を持つアプリとなっているようです。
さらに、新たなメディア展開としてスマートフォン向けの女性ファッションメディア「iQONmagazine」が創刊されました。ELLEgirlで編集長を務めた澄川恭子氏が編集長に迎え、月額300円という課金形態で有料コンテンツを提供しています。コラージュアプリから、1次情報を提供するファッションメディアへと領域を広げて、ネット上のファッションコンテンツを網羅するかのような動きを展開しています。
さて、ここまではネットのコンテンツからECサイトへ送客するモデルについて紹介しました。いっぽうでO2O(Online to Offline)、ネットから実店舗へ送客する例では、伊勢丹のオウンドメディアである「FASHION HEADLINE」が挙げられます。
特徴的なのはコンテンツの内容が読者が楽しめるファッションニュースに重きを置いており、伊勢丹自身による告知的なニュースは1割を切っているという点です。2014年3月時点で月間70万ユニークの訪問者数があり、リリース後24ヶ月での黒字を目指しているものの、「FASHION HEADLINE」単体で収益を挙げるというよりは、伊勢丹が情報発信をすることで売り場とのシナジー効果を生み出すことを意識していると言います。
ご紹介してきたように、アパレル業界においてはコンテンツマーケティングの好例が多く見られます。オウンドメディアを運営している場合もあれば、「Pinterest」のようなサービスを利用している場合もあります。しかしいずれの例にせよ、企業側の告知ではなくユーザーが求めていたり、ユーザーにとって役に立つコンテンツの提供を心がけている点が共通していることに留意したいですね。
今後もアパレルを取り巻く各種コンテンツサービスの動向に注目していきたいところです。