小売り客の購買体験を向上させる人工知能技術
一人一人の顧客が持つ好みに合わせてアプローチを最適化するAI技術
人工知能を活用したシステムは業界を一変させる可能性を持っています。いつ、どのように顧客にリーチするべきかを正確に分析し、購買体験の向上に寄与するからです。小売業界ではIBM Watson等の人工知能技術を使って、より精緻なパーソナライゼーションを可能にする仕組みを開発し始めています。技術ライターのEster Sheinが小売業界におけるAI活用動向をまとめています。
IBMの関連会社Bluewolfは、パーソナライゼーションを全ての顧客に適用するのが成長につながると語りました。EメールやWebサイトを、受け手の属性や感情、過去のやり取りによって最適化していけるというビジョンを描いています。マーケティング領域で人工知能に投資した会社は、購買体験や生産性の観点で競合他社を凌駕するだろうと分析しました。
キャンペーン効果と生産性向上を同時に実現し、高まる投資対効果
化粧品を手掛けるSephora社はMicrosoftの人工知能Cortanaを用いて、顧客のお気に入り商品の在庫が入ったり、値下げされたりした場合に、Eメールやスマホの通知でユーザーに連絡をとる仕組みを開発しました。一人一人の好みに合わせた連絡手段とメッセージ内容でリーチするため効果が高く、また、人手がかからない仕組みなので生産性向上にもつながっています。これまで分析できなかった非構造化データから洞察を得る取り組みにより、AI技術開発は高い投資対効果が期待できるのです。
チャットボットのようなカスタマージャーニーの自動化に期待
ITサービスを提供するWipro社は、カスタマージャーニーの自動化に期待を寄せています。ユーザーへの機能紹介・説明からカスタマーサポート、さらには、顧客からのフィードバックによる製品改善まで、全てのデータを一か所に統合し、人工知能での解析を目指します。手作業を減らし、人間はより戦略的な判断へ集中させる戦略です。
マーケティング担当者にとって気になるのはマーケティングや営業に、どう人工知能を活用するかという点です。各顧客にとって最適な商品やキャンペーンを推薦・提案する仕組みを自動化する仕組みは強力なツールになると見られています。特に、音声入力を含めたユーザーからの様々な質問に自動応答できるチャットボットには大きな可能性があります。
まとめ
ソーシャルメディア等から得られる膨大なデータは、人手ではなく人工知能による解析が不可欠です。これまで分析できなかったユーザーの行動・言動から新たな洞察を獲得し、より精緻なセグメントを作成して、意味のあるコミュニケーションが図れるようになっていくでしょう。
参考資料
http://searchitchannel.techtarget.com/feature/Understanding-artificial-intelligence-for-retail-customers
著者:Takayuki Sato