ドコモが持つビックデータの可能性
先日、自転車やバイクなどのシェアサービスを展開している「街乗りシェアリングシステム」から、自転車の位置情報を把握する実証実験を行うという発表がありました。
位置情報は小型のGPS通信端末を利用して行われ、今後は高齢者、就学児童、ペット、貴重品などについても位置情報を取得し、それらのデータを活用したサービス展開を予定しているため注目が集まっています。
今回使われている小型のGPS通信端末は、NTTドコモの位置情報プラットフォームで提供されている端末のため、実験のデータがドコモ側にも渡ることは想像に難くありません。それとは別に、ドコモは独自で保有しているビックデータの活用を進めていますので、シェアサービスで取得したデータと合わせることでより多様な推計ができる可能性を秘めています。
そこで今回は、ドコモが進めている「モバイル空間統計」というビックデータを活用したプロジェクトについて取り上げてみたいと思います。
「モバイル空間統計」とは、簡単に言うと「いつ」「どこに」「どのような属性の人が」「どれだけいるのか」といったことをドコモの保有するビックデータから推計する仕組みのことで、ドコモの携帯電話(法人契約分は対象外)が在圏している基地局エリア情報を基に、時間帯別・エリア別に人口を推計することができます。
ドコモは約6,000万の契約件数を持ち、「モバイル空間統計」はそれらの携帯電話がつながるエリアを100%カバーしていますので、ほぼ全国の地域を対象に人口を推計することができると考えられます。
この推計は、365日24時間の人口分布を1時間毎に500mメッシュ(500m単位の網の目レベル)の精度で把握でき、さらに携帯電話契約情報から性別・年齢・居住地などが分かりますので、例えば、とある日の午後3時に渋谷エリアに流入した人口を性別・年齢層別・居住地別に可視化するといったことが技術的には可能です。
これまでの活用例としては、埼玉県において帰宅困難者の調査がなされています。埼玉県内で発生する帰宅困難者数や県内主要5駅の帰宅困難者数、埼玉県外にいる埼玉県民の人数(徒歩帰宅シミュレーション)が推計され、食料や飲料水などの備蓄場所と必要量、一時滞在施設の必要数などの設定に役立てられているようです。
また、今後は地方自治体だけでなく民間レベルでの活用も期待されています。
人口推計データを元に、例えば出店計画や既存店の見直し、品揃え計画、イベントの広告・販促効果を検証する、といったような用途にも活用できるかも知れません。
さらにドコモはデータの粒度を250mメッシュに細分化し、1ヶ月前の過去情報をリアルタイムで推計できるようにする計画を立てています。
仮にこのような情報が一般公開されていけば、2020年の東京オリンピックに向けても様々なサービスが立ち上がることが期待できそうですね。
携帯電話には先に挙げたデータ以外にもネットで購入した商品やサービスの嗜好データもありますので、ドコモが実際に行うどうかは別として、それらのビックデータを分析することでより高精度のレコメンデーション、パーソナライゼーションできる可能性を秘めています。
しかし、こうしたユーザーの個人情報とも言えるデータは、匿名化したとしてもどこまで事業者側が利用して良いのかということについてまだ明確に制度化されていないのが現状なため、今後も注視していく必要があります。
さまざまな業界に事業機会をもたらしそうなトピックですので、
新しい動きがありましたらまた取り上げてみたいと思います。